Ford Explorer '2020
日本では発売されなくなったFord車のフルサイズSUV「Ford Explorer」である。
アメリカではこのサイズSUVをフルサイズのSUVとして扱われているが、実際にはこの上にピックアップトラックと言う「乗用車」が存在するため、日本では最大サイズだと思われる乗用車も彼の地では中間層のファーストカーとはなりえないというところが恐ろしい。用途としては比較的裕福な家庭のセカンドカーとして、日本のミニバン的な役割を担うのではないだろうか。
Cピラーが前方に傾斜しており、サイドグラスエリアがリアウィンドウガラスまで連続し、ほぼ垂直に前後を切り落としているフォルムは先代の面影を色濃く残している。ヘッドランプを車幅いっぱいまで広げた結果ボディロアーの安定感が増している。ラウンドスクエアな先代のデザインから、現在のFordデザインで取り入れられている有機的で肉感を感じる造形へと変貌を遂げている。
前後のフェンダー周りや、バンパー下部に黒色の樹脂製のクラテッィングが用いられており、SUVとして一般的なデザイン要素を備えているが、SUVとしての実用性ではなく、ミニバンとして使われる日常感からの脱却の意味合いが強いだろう。実際の天地方向の寸法は結構大きいのだが、ボディ下部のクラテッィングが拡大され視覚的にはボディーが天地に薄くなったように感じられる。いくらSUVといえど、ミニバン的な日常感から脱却しスポーティーデザインの追求していくという傾向は車に求められる本質的な要素かと自問すれば甚だ疑問であるが、今日の消費者の心理は確実にそこを求めているということなのだろう。
アメリカを販売の主戦場とすることから当たり前のように高いけん引能力を備え、プレジャーボートをけん引しても違和感は感じさせない。
サイドから見るとルーフは後方に向けてなだらかに傾斜しており、ただの箱ではなく車としての躍動感の演出に大きく貢献している。ルーフから延ばされたスポイラーは空力的には意味があり、デザイン的な繊細さを強調する部分ではあるがないならないで、道具感が出ていいのではないかと思う。
キャラクターラインはボディの凹面連続的にコントロールすることにより単調な線ではなく、フロントフェンダー後方部分の力強い立体感の逞しさをボディ後方に上手く繋げている。下部のキャラクターラインは対照的に単調に一本の線を強調するように引かれており、肉感的な部分と抑制的な部分をエリア分けすることにより、主張したい造形要素への視線の誘導をコントールしている。
リアから見てもやはりブラックアウトされたバンパー部品が実際のボディの上下方向の寸法を小さく見せており、ボディ色部分だけ見ればSUVやミニバンではなく、ステーションワゴンといった趣である。
インテリアは、上級モデルの「Platinum」のものであるが、 ダッシュボード上面は非常にシンプルで フロントグラスに映りこんでしまうことを考えればもうこれで充分というものである。一応質感を高めるために 縁にはステッチが設けられており 完全にプラスチッキーという感じではない。素材もそれなりに柔らかいものであるはずである。ステアリングホイールは真円で、サイドスポークに操作ボタンが儲けられるというごく一般的なものである。ボタンが所狭しと並ぶところは現在の自動車ではしょうがないことかもしれない。
エアコン等の空調のコントロール系は従来通りスイッチ方であり なんでもかんでもディスプレイに変えようとするメーカーと違い好感を持てるのだが、もう少し大きなスイッチにしてあげてもいいのではないだろうか。それとも単び、これは単に車体がでかいからボタンが小さく感じるだだけかもしれないが。またエンジンスタートスイッチがエアコン吹き出し口直下にほぼ水平に設けられており、これまであまり見たことない配置である。
ギアのセレクトレバーは廃止され、ダイヤル式となっている。またパーキングブレーキも電動パーキングブレーキとなり、運航に必要な入力デバイスは小奇麗にまとめられている。もうこれからの自動車の操作系はこの程度のエレメントだけで構築してもいいのかもしれない。むしろ、シフトレバーなどは場所を取るだけでなく、スイッチや物置へのアクセスを悪くするだけのただの有害な造形機構なのかもしれない。ただ触覚に頼った操作ができなくなるのは少し難点ではある。マニュアル派の人間としては少し寂しくも感じるが、車内での快適性を考えると一概に悪いとも言えないし、この方式になれない人間の方が時代遅れなのかもしれない。
センターコンソール上部には大型の縦型のディスプレイが備え付けられている。これは上級モデル限られる仕様で一般的な海モデルは上下の寸法が小さいものが用いられる。 ただ、この画像だけ見れば「10インチ程度のタブレットを置いてみました」感満載で、デザイン的な配慮はほとんどなされていない。インフォテイメントシステム部分については将来的にアップデートされ、本体ごと交換されるといった事態が考えるならば、このデザインでも納得であるが、基本的にこのままということであれば、考えを持って造形して欲しいところではある。
また「Ford Explorer」としては初めて「ST」の名を冠したハイパフォーマンスモデルが設定される。 エンジンは最高出力400hp・最大トルク563Nmを発生する3リッターV6エコブーストエンジンを搭載し,10速ATを介して最大21インチののホイールのタイヤを駆動させる。
外見の特徴としては、グリルがブラックアウトされバンパー下部のパーツに専用品が用意される。ブレーキキャリパーは赤くペイントされ存在を主張するが、ブレンボなどのハイブランド品が付くわけではないようである。ホイールはより大径のモノが選択可能で、外見での差別化は意外と小さい。しかし、変化点こそ少ないがもののぐっとスポーティーな 装いとなっていることから、コストパフォーマンスに優れた方法であるとは言える。スポーティモデルだからと言ってバンパーなどもすべて新作する必要があるわけではないのだ。
2016年9月をもって日本から撤退してしまったFordであるが、今思えばEurope_Fordが開発したFord FiestaやFord Focusは比較的アメリカブランドの車としては日本でも使いやすい車ではなかったかと思うし、その動的質感にも一部から肯定的を持たれていた。日本人にありがたがれる舶来品としてのステータスや審美性はほとんどなかった故ではある。撤退してしまったのは日本の自動車市場から多様性が一つ消えてしまったようで残念でならない。
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